歯の健康から全身健康維持に欠かせない予防
「虫歯になっても、削って治療をすればよくなる」
このように考えている方は多いのではないでしょうか。
確かに、虫歯の部分を削り取り、硬い金属の詰め物・かぶせ物をすると、以前よりも丈夫になった感じがするかもしれません。しかし、残念なことに、歯は治療すればするほど悪くなります。
あまり知られていない事ですが、お口の中というのは非常に過酷な環境に置かれています。熱い食べ物、冷たい飲み物が絶えず入ってきますし、物を噛み砕く際は、歯と歯がはげしくぶつかり合います。この厳しい環境が原因で、「歯」と「詰め物・かぶせ物」の間には目で確認できないほどの小さな隙間がどうしても生じてしまいます。そこから虫歯菌が侵入し、虫歯が再発します。
そして、一度、治療した歯を再治療する際には、さらに大きく歯を削る必要があります。
この再治療のサイクルを繰り返してしまうと、最終的には削る歯もなくなり、抜歯、そしてインプラント・入れ歯・ブリッジの治療を行う可能性が高くなってしまいます。
このことを裏付けるデータとして、成人の方の虫歯治療の70~80%は、新たにできた虫歯の治療ではなく、過去に治療した歯の再治療であると言われています。
1度治療した歯は強くなったのではなく、弱くなったという認識が大切です。
治療後、虫歯再発とならないために、予防・メインテナンスの正しい知識を持ち、少しだけこれまでと違う行動をとることが大切となります。
「毎日、歯を磨いているのに虫歯・歯周病になるのはどうしてですか?」
患者さんからよく聞かれる質問のひとつです。
もちろん、毎日の歯磨き習慣は大切なことです。
しかしながら、それだけでは虫歯・歯周病の予防ができないのも事実です。
その秘密は、バイオフィルムとよばれる歯磨きをしていても除去できない強力な汚れにあります。
残念なことに歯磨き剤だけでは口の中の「バイオフィルム」を完全に落とし切ることはできません。これが、毎日、歯を磨いていても虫歯・歯周病になってしまう原因なのです。
バイオフィルムとは虫歯菌・歯周病菌にとってのバリアのようなものといえます。このバリアを壊さない限り、虫歯菌・歯周病菌に直接効果的な攻撃を加えることはできないのです。
このバリア(バイオフィルム)を除去するためには、歯科医院で定期的にPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)と呼ばれる”プロによる機械を用いた歯のクリーニング”を受ける必要があります。
歯科医院での定期的な予防・メインテナンスを「した方」と「そうでない方」の年齢別の統計があります。これによると80歳になったときに残っている歯の本数にはメインテナンスを「した方」と「そうでない方」には9本近くの開きがでるという結果になりました。
定期的な予防・メインテナンスは歯周病の予防や進行の抑制に非常に効果が高いと言われています。
「3~6カ月に1回の定期的メインテナンスに行くのは面倒だし、費用も高くなりそうだな」と感じておられる方も多いと思います。
しかし、結果はどうでしょうか。
調べによると定期的に通院した方が約300万円も治療コストがかかっていないという結果もあります。
また、なによりも主張したい点は、「80歳になっても自分の歯でいられる」ことの素晴らしさです。
一般の方々は「歳をとれば、自然に歯が抜けてしまうものだ」とお考えの方がいると思いますが、事実は違います。若いころから歯科医院で定期的にメインテナンスを受けていれば、上記の図・統計にもあるように、多くの歯を残すことが可能となるのです。
歯を失うことの辛さは、実際に失った方でないと分りませんが、事実、生活の質が落ちてしまいます。快適な老後を送るためにも、早いうちから歯のありがたみを理解し、日々のブラッシング、定期的なメインテナンスを生活習慣の1つに組み込むことが非常に大切となります。